近年痛みに関する研究が進んでおり、痛みという言葉の定義や概念が変化しています。痛みは生命を危険から避け、維持するために備わっている生体防御反応であり外敵や障害の対象が存在することで生じる感覚として認識されていましたが、国際疼痛学会によると痛みは感覚としてだけではなく情動(気持ち、感情)としても捉えるように変化しています。痛みは「からだ」から発生される警告信号であると同時に「こころ」から発せられる警告信号であるということも示されました。私たちが痛みを感じる時には外的刺激(打撲、切り傷、骨折などの外傷や熱傷、凍傷など寒冷刺激など)が痛みの伝導路を伝わり脊髄から脳に情報が伝わり痛みとして感じます。このような痛みは侵害受容性疼痛といいます。また痛みを伝える神経や脊髄、脳そのものに損傷が引き金になって生じる痛みを神経障害性疼痛といい、痛覚過敏(触っただけで痛い)なども特徴的です。この二つの痛みはある組織が損傷されて引き起こされた痛みですが、もう一つ痛みの原因がはっきりしない痛みを今までは心理社会的疼痛(心因性疼痛)といわれていたのですが、2016年に国際疼痛学会が組織の損傷がなくても生じる痛みを提唱しましたが昨年痛覚変調性疼痛という日本語訳に統一されました。これに伴い慢性疼痛(3ヶ月以上持続する疼痛)の分類も原因があるものを二次性疼痛と原因がはっきりしない一次性疼痛に分類されました。このような痛みの認識が今後の痛み治療に携わる医療従事者においては必要になりますので理解が難しいとは思いますがあえて紹介させていただきました。
参考:日本ペインクリニック学会hp: