第87回 肩こりと腰痛の関係

腰痛患者数は全世界では6億3200万人(2012Lancet)、日本では約1,000 万人で、人口千人あたり約90人以上で国民の愁訴の中で第1位です。また肩こり(首こり、頚部痛を含めて)は日本では女性で人口千人あたり約120人で愁訴の1位です。(厚生省国民生活基礎調査)また2016年度の30-40才代の男女5万人のウェブ調査でも肩こり54.6%、腰痛46.8%で肩こり歴は平均12.4年、腰痛歴は平均9.9年と慢性化しているという結果でした。(県別ランキングで山口県は肩こり38位、腰痛28位で、肩こり、腰痛が少ない県ではストレス度は低く、満足度も高いという結果でした。)肩こりと腰痛の関連はこれまでもあると考えられていましたが明らかなエビデンスはありませんでしたが、最近弘前大学整形外科の先生の論文によると1122名の一般住民の調査では肩こりのみが22.5%、腰痛のみが16.2%であり、両者が併存している人が29.4%と約3割を占め女性に多いという結果でした。また肩こりと腰痛の併存は、男女双方のメンタルヘルス状態の悪化と関連しており、女性では身体的QOL(生活の質)が低いこととも関連していたという結果でした。肩こりが先か?腰痛が先か?という問題は卵が先か鶏が先か?という論争にも似ていますが今後両者の関係が科学的にも明らかにされて来ると考えますので、腰痛だけ、肩こりだけの方は両者が合併しないように早めに対策される(整形外科受診する)ことをお勧めします。

参考文献 https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_loxonin-s/gaiyou/common/pdf/research01.pdf

Kumagai G, et al. BMC Musculoskelet Disord. 2021; 22: 14.

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。