骨粗鬆症に伴う高齢者の腰背部痛の原因として椎体骨折や椎体偽関節による痛み、脊柱変形による痛み、骨粗鬆症自体の痛みがあるとされています。急性腰痛での脊椎新鮮骨折は30-60%という報告がありますが、骨癒合が完成していない椎体偽関節による痛みは椎体不安定性に伴う炎症細胞浸潤や血管新生、閉鎖腔における内圧上昇などの要因が複合して機械的、化学的、熱刺激などのポリモーダル受容器に作用して痛みが生じます。脊柱変形による痛みは椎体が前潰れになって生じる後弯増強による傍脊柱筋内圧上昇や筋疲労によって生じますし、胸椎部が後弯する代償性に腰椎が前弯増強することによる椎間関節へのストレスによっても生じます。骨粗鬆症症自体による痛みは骨吸収が亢進し、破骨細胞がホルモンを活性化することで生じる骨由来の痛みによって生じます。骨微細構造の破綻にともない骨内神経が刺激され、痛覚過敏状態になることなども原因とされています。このように原因が重複する場合もあるので治療者側も患者さんの痛みの状況や発症時期など問診をしっかり行い治療に当たる必要があります。
第64回 高齢者の腰背部痛の原因
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