この言葉は聞きなれないかもしれませんが、脊椎の専門医であれば腰の診察を行う上で必ず念頭に置かなければならない疾患の一つです。
末梢閉塞性動脈疾患はアテローム性動脈硬化症に起因する心血管系疾患として、冠動脈疾患、脳卒中に次いで3番目に多く2010年での世界の患者数は2億2000万人と言われ、東南アジアで5480万人であり、その治療は21世紀の世界的な取り組むべき課題とされます。足のしびれ、疼痛で整形外科を受診する患者さんで、間欠跛行(歩行の途中で休憩が必要であり、しばらく休んだらまた歩ける)があるときに、腰部脊柱管狭窄症がありますが、この疾患との違いは間欠跛行での休憩の仕方にあり、腰部脊柱管狭窄症では休憩するときに必ず前かがみや椅子に座ることが必要となります。
理由は腰の神経が狭窄すると馬尾神経の阻血、浮腫、炎症が生じるためです。末梢動脈閉塞症に伴う間欠跛行は下肢の動脈が阻血になると大腿や下腿の筋肉の血流が途絶えて下肢の痛みが生じますが、休憩するときには立ったままで楽になります。重症度分類としてFontaine分類があり安静時疼痛しびれのみのI度、間欠跛行のII度、安静時疼痛のIII度、壊死切断に至るIV度があり、症状のないI度のときに早期発見、早期治療を行うことが重要であると考えます。
そこで当院を下肢のしびれ、疼痛で受診した50歳以上の患者さん996例のうち血圧脈波検査装置でABI(腕の血圧を足首の血圧で割った値)が0.9以下を末梢閉塞性動脈疾患としてその頻度を調査したところ、その頻度は55例6.3%でした。そのうち血管外科紹介患者は18例33%、ステント・バルーンでの治療患者は4例7%でした。腰部脊柱管狭窄症は23例 42%に存在したが、脊椎外科紹介手術例は1例2%でした。
このことから足のしびれ、疼痛を訴える患者さんの中で末梢閉塞性動脈疾患は決して頻度は高くありませんが、早期発見により、一人でも多く足の切断となるのを防ぐために有用な検査と考えています。当院外来でも足の病変に悩む患者さんが多いので、少しでも知識を吸収し、治療に還元するため、フットケア指導士の資格を取得しました。当院理学療法士も取得しており、今後は看護師とも協力して血管病変だけでなく、幅広く足の病変に対しての取り組みを行っていきます。