第28回 神経障害性疼痛とは?

最近武田鉄矢氏のテレビCMで耳にすることのある神経障害性疼痛、という言葉を聞いたことがある方も増えてきましたが、まだ一般の方には浸透していないようです。

痛みは国際疼痛学会によって組織の損傷による痛いという感覚と、それに伴う恐怖や不安などの情動を合わせたものと定義されています。痛いという感覚は警告として必要な痛みであり、ストレスからくる痛みは不必要な痛みです。痛み刺激は末梢から神経、脊髄から脳に伝わり、痛みとして認識されます。痛みは発生機序から侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類されます。侵害受容性疼痛とは、けがや変形などで末梢の侵害受容器が興奮して大脳(皮質感覚野)に痛みが伝わり、痛いと感じる痛みで、神経機能は正常です。神経障害性疼痛は末梢神経に傷がつくことで、神経が過剰に興奮したり、脊髄や脳も過剰に興奮することで触っただけで痛いと感じたり(アロデニアといいます)、自律神経反射が生じるため、刺激がない状態でも痛みを生じます。ビリビリ、ジンジン、チクチクといった痛みしびれが上肢や下肢に放散する場合には神経の異常な興奮(神経障害性疼痛)を疑いますが、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛は明確に分類することが困難な場合もあり、またもう一つ心因性疼痛という概念もあり、専門医による鑑別が必要です。座骨神経痛、腰椎椎間板ヘルニア、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性末梢神経障害などによる痛み、しびれが該当します。通常の痛み止め(消炎鎮痛剤)が効かないことが多く、プレガバリンという薬が効果があると言われています。副作用として眠気やふらつきがあるので就寝前から内服を始める場合が多く、徐々に増量していきます。決して薬物のみでなく神経ブロック、理学療法、認知行動療法を併用して治療していきます。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。