私が脊椎外科を志し、腰痛治療を行う上で最も尊敬するのが福島県立医大学長の菊地臣一先生です。先生は日本の整形外科医、脊椎外科医なら知らない人はいない方ですが、決して奢らず、学問に対する真摯な考え方だけでなく、人としてどうあるべきかを先生の教授時代に教室員(整形外科医師)達に送り続けたメールやインタビュー、講演のお話から学ぶことができます。
情熱院長という動画で先生が実地医科を担う先生方へのメッセージと題して腰痛のお話をされた内容から抜粋します。
腰痛の治療はこの10年で劇的に変わった。 昔は腰の痛みは局所の問題と捉えていたが 今は腰痛は不健康いわゆる、生物社会心理学的症候群として捉えるようになった。腰痛治療に当たる医師は、その人間のバックグラウンド(仕事で悩んでいないか、地域で困ったトラブルに巻き込まれていないか、子供の教育問題でこまっていないか?)まで探る必要があり、腰痛治療は痛みをとることが目的でなく、元の痛みがなかった状態と同じように動けることが目的である。痛くても前と同じように動ければよく、 レッドフラッグ(重篤な病理疾患—骨折、感染、腫瘍など)が潜んでいなければよい。慢性腰痛は痛みだけでなく人間の健康のすべてを悪くし、動かないことは身体も心も悪くする。健全な精神は健全な肉体に宿るのであり、現代科学は健全な肉体は健全な精神に宿るとはき違えていた。
腰痛に対する運動は特に歩くことがよく 免疫機能を上げ、炎症を抑えることが判っている。 身体を動かすには運動器が大切であり、運動器のかかりつけ医をもつことが大事。体を体としてみるのではなく、体も心も社会もトータルとして見てくれる医師が必要である。患者さんも治してくれるという考え方でなく、自分で治すという心構えで、必要な支援を医療者側から受けることが肝要である。
実地臨床に当たる医師として心しておく必要があります。
興味がある方はご覧ください。 (https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=IkTsOLuvNlU)