第20回 腰椎椎間板ヘルニアの日本での将来的な治療

腰椎椎間板ヘルニアの治療は安静、投薬、ブロック、手術に分けられます。手術的治療については顕微鏡、内視鏡を使用して低侵襲な治療が行われているのが現状です。顕微鏡での手術も内視鏡での手術も熟練した脊椎外科医が行えば安全で低侵襲の治療ですが、最近では内視鏡での手術件数が増加傾向にありますが術者によってラーニングカーブが異なったり、空間認知能力に差があったりするので、一長一短があります。私も顕微鏡と内視鏡手術の両者を経験しましたが、やはり顕微鏡の方が性にあっていました。両者とも神経に対する侵襲という点ではほぼ同じですが、内視鏡手術の方が皮切が小さく、起きるのがやや早いということで、患者さんもネットで調べて内視鏡手術を選択される方も増えてきています。最近では経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(PED:Percutaneous Endoscopic Discectomy)という、より低侵襲の内視鏡も施設を限定して行われていますので、患者さんにとっては手術方法の選択肢が増えることはいいことですが、インターネットなどの情報に惑わされすぎないように注意する必要があります。(まずは自分のかかっている整形外科医と相談することをお勧めします)

最後に日本が主導の将来有望な治療を紹介すると、東海大学持田教授らの椎間板髄核細胞再生治療、山梨大学整形外科波呂教授らのMMP-7という椎間板内分解酵素による椎間板内注入療法(2013年米国で臨床治験開始されています)、浜松医科大学松山教授らのコンドロイチナーゼABCによる椎間板内治療などが注目されています。いずれも研究、臨床治験の段階ですので結果が出るのは少し先ですが、近い将来このような椎間板内治療(局所麻酔で行うことが可能です)により、腰椎椎間板ヘルニア発症初期から積極的な根治治療が可能になる時代が早くくることを期待します。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。