腰椎椎間板ヘルニアは従来、職業上の負荷、喫煙、スポーツなどの環境因子が重要であるとされてきました。しかしながら一卵性双生児の腰椎椎間板の変性が偶然の一致以上に極めて類似していたり、家族集積性を証明した論文がでてから、遺伝性素因が最も重要であることがわかってきました。
1998年SpineというジャーナルにビタミンD受容体遺伝子が椎間板ヘルニアの疾患関連遺伝子である可能性をはじめて報告されました。また腰椎椎間板ヘルニアは特定の遺伝子で発症するのではなく、いくつかの遺伝子の関与する遺伝子多型といわれています。富山大学整形外科や慶応大学、京都府立医科大学、理化学研究所などの腰椎椎間板ヘルニア遺伝子研究グループが約500例の腰椎椎間板ヘルニアの遺伝子解析を行い2005年から2013年に7つの椎間板ヘルニア感受性遺伝子を発見しています。この解析手法はある特定の遺伝子を持っていると持っていない人と比べてどの程度腰椎椎間板ヘルニアになりやすいかを統計学的に検討したものであり、1.34倍から1.70倍で決して高いとも言えません(オッズ比といいます)。腰椎椎間板ヘルニアの遺伝子研究はまだ解明されたとはいえず、今後全遺伝子を対象として網羅的な解析がなされることが期待されます。