日本の腰痛ガイドラインが昨年出されましたが、世界のガイドラインと同様にまず症状に応じて安静期間をとりますが、長くても2、3日でその後は痛みに応じていままでの活動性を維持することです。急性腰痛ではひたすら寝ておくことは、かえってよくないことが常識となっていますので、痛みに応じて苦痛の少ない範囲で身の回りのことを行ったほうが仕事への復職も早くなることも臨床研究で明らかになってきました。治療薬としてNSAIDS(今までの痛み止め)とアセトアミノフェンが第一選択薬として、筋弛緩剤や抗不安薬、抗うつ薬、オピオイドなども第2選択薬として推奨されています
NSAIDSは最もよく使用され、効果も明らかにされた薬物ですが、近年胃腸障害だけでなく、慢性腎障害も問題になっており、2週間から1ヶ月以上の連続する使用は特に高齢者では腎機能検査をする必要があります。アセトアミノフェン(カロナール)は、胃腸障害や腎障害の可能性が極めて低い安全な薬剤ですが、以前は1200mgまでしか使用できず、小児、喘息やNSAIDSアレルギーのある患者さん、妊婦さんなどにしか使用されませんでしたが昨年厚労省が欧米では標準的な4000mgまで使用可能であるとする勧告を出しましたので徐々に使用頻度が増えてきています。粉と錠剤があり、錠剤だと1錠が300mgなので6−9錠飲むと効果が期待できますが、こちらは肝機能障害に気をつける必要があります。(定期的血液検査を行うことで安全に使用可能です)ただしアセトアミノフェンは鎮痛効果ありますが抗炎症作用がないので炎症が主体の痛みには効果が低いと言われています。
抗不安薬、抗うつ薬も腰痛症の治療でよくつかわれますが、腰痛には心理的社会的ストレスが原因で生じる場合があり、腰痛に対する恐怖心から過剰に動こうとしないことを恐怖回避思考、行動といい、このような薬のほうが効果があることもあります。患者さんが心配しすぎない様にアドバイスすること、急性腰痛を慢性化しないことが私達整形外科医の役割と考えています。
またオピオイドも腰痛治療に有効であり通常のNSAIDSが効かない場合には使用を検討しても良い薬剤です。特に弱オピオイドのトラマドールとアセトアミノフェンの合剤は最近使用頻度が増えている薬剤ですが、副作用として嘔気、眠気、便秘などがありますので注意が必要ですが、鎮痛効果は強力です。その他トラマドール単剤も発売されましたし、ブプレノルフィンのパッチ剤(1週間に1回貼り替える)、また強オピオイドのドゥロテップパッチ(3日に1回貼り替える)もありますが、後者は麻薬処方箋が必要になりますが急性腰痛症で必要になる場合はごく限られています。
(次回は運動療法についてです)