院長ブログ – ページ 99
日本骨粗鬆症学会で参加、発表しました
2017/10/23
帝京大学の岡崎先生の骨粗鬆症診療における25(OH)D測定の意義について拝聴しました。25(OH)D測定は骨軟化症、ビタミンD欠乏性くる病で保険適応が認められたそうです。25(OH)Dの正常値は9ー20ng/mlとされていますが実臨床では30ng/ml以上がビタミンD充足、30未満がビタミンD非充足と判定し、20ー30でビタミンD不足、20未満でビタミンD欠乏症と判定するそうです。
ビタミンDが不足すると二次的に副甲状腺機能が亢進して、骨密度が低下して骨吸収抑制剤の効果が減弱したり、転倒骨折リスクが増加します。ビタミンDは紫外線や食事でとれますが肝臓で代謝され、25(OH)Dになります。活性化ビタミンD(1、25(OH)2D)よりビタミンD充足や欠乏を反映することができます。抗痙攣薬でビタミンD欠乏症になるとのことでした。ビタミンD欠乏症では保険適応の活性型ビタミンD内服のみでなく、ビタミンDを補充する必要があるそうです。日本でのJPOSスタディでビタミンD欠乏症が多く、15年の骨折と関連したそうです。ビタミンD欠乏と副甲状腺機能亢進が合併すると骨折リスクがより増加します。二型糖尿病でも半数でビタミンD欠乏症であったことも紹介されました。ビスフォスネート製剤の反応が悪いグループの解析で有意にビタミンDが低いのでビタミンD欠乏の計測の意義を強調されました。日本人の栄養摂取ではビタミンD不足で一日480単位が必要であり、アジア人で紫外線を浴びていても1000単位必要で1ng上昇するのに100単位必要で食事ではあん肝シャケなどには多く含まれているそうです。直射日光を夏では20分浴びると1000単位補充されるそうです。
次いでよくわかるシリーズの鳥取大学保健学科教授の荻野先生の骨粗鬆症診療の実態ー人口の高齢化、骨折発生の推移などを見据えてーの講演を拝聴しました。脆弱性骨折とは手をつくなど軽微な外傷で生じる骨折であり骨粗鬆症が原因です。
日本人の骨粗鬆症の有病率は1280万人と推定され、この10年で骨密度はやや増加しているそうで、体重増加が原因とのことでした。骨粗鬆症を疑われ診断をする場合とは骨折した場合、検診で骨粗鬆症を指摘された、腰背部痛などです。FOSTA(体重ー年齢)×0、2、FRAXなどの骨折リスク評価ツールも紹介されました。骨折リスクは骨密度、骨折の既往、年齢が独立した要因です。
次いで近畿大学の三浦先生の骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの実践的活用方法を拝聴しました。骨代謝マーカーの利点は簡便な検査で全身のコツの状態がわかり2ー3ヶ月で変動を見ることができ、治療効果の指標となります。
骨代謝マーカーには骨形成マーカーではBAP、P1NP、骨吸収マーカーではTRACP5b、NTXなどがあります。尿中CTX高値で大腿骨頸部骨折のリスクが有意に上昇するとのことでした。ベースラインとしてCTXとP1NPを測定し、3ヶ月後に効果判定するそうです。ビタミンD(25(OH)D)についても重要な検査であることを説明されました。
周東総合病院で講演しました
2017/10/23
山口中央疼痛セミナーに参加しました。
2017/10/11
ついで大阪大学疼痛医学講座准教授の三木先生の運動器慢性疼痛のスキル~NSAIDs、弱オピオイド投与前にすべきこと、してはいけないこと~の講演を拝聴しました。慢性疼痛の定義では治療を要すると期待される時間の枠組みを超えて持続する痛みあるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛みとされます。人工膝関節形成術の2割が疼痛残存し満足していないという報告があること、NSAIDs効果不十分で腎機能リスクがあると弱オピオイドの選択肢を考慮すること、神経障害性疼痛は12パーセントぐらいの頻度であり、単にじんじん、ビリビリというだけでリリカを安易に投与しないことなど教えていただきました。
心理的ストレスが加わると腰椎にかかる負荷が70kg増加するという臨床実験を紹介されました。鎮痛剤の乱用の頻度はNSAIDsと弱オピオイドは2パーセント台で同等であったそうです。高齢者はオピオイドの依存が少なく、少量でもオピオイドは効くので原因不明の疼痛には使用しない方がよいとのことでした。コミュニケーションスキル研修として2023年医学教育に導入されるそうですが傾聴するだけでなく、相手にわかるように共感すること、答えを言わずに患者さんの回答を導き出すソクラテス問答なども教えていただきました。懇親会でも座長の田中先生と池田先生、三木先生と写真撮影させていただき三木先生には貴重なお話を聞かせて頂きました。
骨と関節の日のイベント
2017/10/02
10/1 宇部市文化会館で山口県臨床整形外科学会の骨と関節の日のイベントがあり、応援にかけつけました。超音波による骨密度測定の後に小野田労災病院整形外科の富永部長の「背骨とその中にある神経について」について拝聴しました。生理機能は加齢とともに上肢より下肢の方が衰えていきます。骨には体の形態を維持するのと体の恒常性を維持する働きがあります。骨粗鬆症は骨密度の低下と骨質の低下が原因であり、両親の骨折歴や関節リウマチ、喫煙、アルコールなどが骨折の危険因子です。骨粗鬆症による骨折は手関節、上腕骨、脊椎、大腿骨頸部などがあります。脊椎、脊髄の解剖の解説をされ、脊髄損傷は最近では60才以上で多くなり、明らかな骨折脱臼を伴わない例が増加しています。腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症の違いを説明していただきました。脊椎由来の痛みに対して患者さんは痛みをとることを希望されてこられますが、脊椎外科医として痛みが残っても運動したりして痛みを和らげていくそうです。次いで宇部市整形外科開業医の先生方が前でロコモ体操を踊られそれに合わせて聴衆もロコモ体操を踊りました。
最後に山口大学整形外科田口教授の「ロコモティブシンドロームと体の痛み」の講演があり、拝聴しました。ロコモティブシンドロームは運動器の機能が低下して要介護や寝たきりになる前段階であり、全国では認知度は47パーセントですが山口県は認知度はやや低いのですが不安は多いとのことでした。日本人の平均寿命は香港に続いて二番目に多いそうです。平均寿命は0才が何才まで生きれるか?ということで平均寿命に達しても平均余命はまだあるとのことでしたが介護など必要ない健康寿命を伸ばすことが重要です。生命活動の維持にはミトコンドリアがATPというエネルギーを産生し、細胞は0、5パーセント入れ替わって維持しているそうです。老化とは活性酸素が出て細胞のコピーミスでが傷つくことです。ゾウもネズミもネコも心臓が20億回打って止まるそうですがヒトはなぜ長寿かというと活性酸素を取り除くSODをたくさん持っており、理論的には120才まで生きれるそうです。要介護の原因として運動器の障害が多く、日常生活動作の低下は男性で13、6才、女性では5、4才平均余命が短縮するそうですので超高齢者社会で運動器の機能が長寿に追いつけず、運動器の機能に対する意識改革が必要であるとのことでした。平成34年までにロコモの認知度を80パーセントまで増やすことが目標とのことでした。人の健康状態は健康と病気の間の未病の状態であります。代表的疾患で骨粗鬆症、腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症があり加齢とともに合併する率が高くなります。生活不活発病ともいえるロコモティブシンドロームの予防として片足立ちとスクワットを教えていただきました。同じ部位に3週間以上続く痛みは整形外科に相談して頂くこと、治せる痛みがあることなどを分かりやすくお話しされました。
山口市リウマチセミナー
2017/09/29
9/27山口市リウマチセミナーがあり、参加しました。最初にステロイド性糖尿病と骨粗鬆症について山口赤十字病院内科の永尾先生の講演がありました。ステロイド糖尿病についてのメカニズムをレクチャーされました。ステロイド投与で膵α、β細胞量は増加せず機能障害で生じるとのことでした。ステロイド投与中止しても血糖は正常にならない場合はもともと糖尿病があった可能性が高いそうです。短期間のステロイド投与は患者さんの生活の質を考慮して血糖コントロールを行う必要があるそうです。糖尿病では骨折リスクが上昇することは知られていますが骨量低下より骨質低下が原因と言われているので骨密度が正常でも糖尿病性骨粗鬆症のリスクが高い場合には治療の対象になるとのことでした。
次いで山口赤十字病院整形外科の加茂先生の関節リウマチとステロイド性骨粗鬆症の講演があり、ました。最初に先生が取り組んでおられる股関節の上方アプローチを紹介されました。関節リウマチでステロイド投与と同時にアレンドロネート、リセドロネート製剤を開始します。ステロイド投与は1ヶ月おきに1mg減量する方法をとられるそうです。関節リウマチ患者さんの服薬遵守率は39パーセントでリウマトレックスでも6割、ステロイドは3割というデータを紹介されました。治療効果は服薬を守れているかにかかっているのですが原因として多剤になるためという問題があります。予防のエビデンスのあるリウマトレックス投与の場合の葉酸、ステロイド投与の場合の骨粗鬆症薬については投与すべきとのことでした。生物学的製剤の使用は多剤併用の弊害を減らすことにも貢献すしますし、手術をうまく使いこなすことも必要とのことでした。