院長ブログ – ページ 98

11/15 変形性関節症の痛みー病態と治療方針の立て方ーについて千早病院の大石先生の講演を拝聴しました。急性の膝痛で骨壊死と言われていた症例で軟骨下骨の骨折のことがあるという症例を提示されました。
細胞膜に炎症や外傷が生じるとホスホリパーゼA2が活性化されてアラキドン酸が遊離されプロスタグランジンが産生され痛みが誘発され変形性関節症の痛みが誘発されます。
慢性疼痛の原因として下降性疼痛抑制系の機能が減弱されることで生じるとされます。変形性関節症についてはSNRIのサインバルタが適応があり下降性疼痛抑制系の賦活化します。変形性関節症の痛みは侵害受容性疼痛と中枢性の疼痛の両者をターゲットにした治療戦略としてサイトカインとプロスタグランジンに加えてセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を推奨されました。
会の後、来られていた山口済生会病院の三原先生、大野先生とさっか整形外科の目院長と一緒に情報交換を行いました。

11/12大阪で脊椎疾患に対するエコーガイド下Hyreleaseの実際というエコーセミナーがあり参加しました。横浜市立大学の宮武先生に上肢神経障害に対するhydroreleaseの講演でした。hydrorereleaseは最近ではfascia rereleaseと言われていますが、皆川先生はエコーガイド下に結合組織をリリースする方法を提唱されています。しびれの位置から症状を確認して、圧痛、牽引テストupper limb tension testから神経領域を確認してhydrorereleaseするそうです。前腕外側のしびれを訴えてきた患者さんで橈骨神経浅枝周囲にhydrorereleaseする例を提示されました。
次いで和歌山県立医大の岩崎先生の講演で頭頸部の痛みしびれで神経根症についてで神経根症は頸背部の痛みで発症します。神経根症の診断は疼痛部位、スパーリングテスト、shoulder abduction release signで行いますが 神経根ブロックは透視も不要です。半側臥位でプローべを当ててC5、6、7、8神経根ブロックを選択的に行う方法を教えていただきました。次いでよしだ整形外科の吉田先生が腰痛をUSで診てhydrorereleaseで治すという講演でした。椎間関節、腸腰靱帯(L4ー5横突起から腸骨間靱帯)、後仙腸靱帯でのエコー下でのhydroreleaseを紹介されました。骨盤後傾や腰椎過前弯も原因となります。後仙腸靱帯の診断は仙腸関節を用手的に固定すると疼痛が改善する方法を教えてくださいました。次いでおなじみの皆川先生の講演でしゃがめない症例で膝窩部外則を痛がる方に総腓骨神経周囲にhydroreleaseするとしゃがめる症例、立ち上がりで膝か上部に痛みがある患者さんに伏在神経にhydroreleaseして良くなった症例、外反母趾の第1足趾内側しびれで内側足底し神経のhydroreleaseで良くなった症例、脇腹が痛い患者さんで骨折が否定的な場合に圧通部の肋間神経のhydroreleaseも提示されました。
慶応大学の今西先生がしびれと痛みの解剖学について講演されました。被包神経終末と自由神経終末があり自由神経終末が痛みの発痛原になります。痛みの伝導路にはAδ線維とC線維があります。軸索反射や後根反射が生じると慢性疼痛の原因の一つになります。神経因性疼痛は末梢感作や中枢感作が原因と言われています。しびれは虚血障害で生じると言われています。Aβ線維は触覚をつかさどりますがAδ線維やC線維は抑制するとされ、虚血が進行すると触覚から障害されAδ線維の障害でじんじんしC線維の障害でチクチクする感覚を感じます。筋膜は人体の線維性結合組織の総称であり皮下組織は浅層はPAFS、深層はLAFSという二層構造になっており深筋膜のLAFSも重要です。解剖での観察では神経上膜ははっきりせずLAFSの粗な結合組織であり血管網が密であり交感神経や体性神経などが豊富とのことでした。
午後から上肢神経障害に対するhydroreleaseについて宮武先生の講義がありました。
投球障害でリリース時の痛みのある場合紂頭、滑車、内側側副靱帯などがありますが上腕二頭筋と三頭筋内側の正中神経障害の場合がありhydroreleaseが有効例を提示されました。
次いで皆川先生がNTTnerve tension testを紹介されました。次いで岩崎先生がC1ー4根症状について講演されました。C2C4は眼精疲労に関与、C2は大後頭神経障害があり頭皮頭髪への異常感覚がありますが大後頭神経の近位アプローチについて症例提示されました。頚神経叢のブロックについて中斜角筋と胸鎖乳突筋間のhydroreleaseを紹介されました。
吉田先生が最後に仙結節靱帯、坐骨神経、内閉鎖筋、上殿神経、梨状筋、下殿神経のhydroreleaseを紹介されました。deep gluteal syndromeという概念、内閉鎖筋と大臀筋の間のhydroreleaseを紹介されました。上殿神経のhydroreleaseで小殿筋や大腿筋膜張筋の安定性が得られたそうです。
11/10 クリニック終了後にホテルニュータナカで第4回リウマチ病診連携の会に参加しました。医療安全について山口赤十字病院副院長の的場先生、加茂先生が講演されました。インシデントアクシデントレポートの提出についてや、手術場での針刺し事故が起こりやすいこと、手術安全チェックリストの導入で合併症や感染率が減ったそうです。5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)ラウンドをされ、医療事故防止、業務効率の向上を図ることを紹介されました。医療安全の今後ではシステムエラーが強調されすぎ、医師の安全に対する意識が低いなど問題があり、笑顔のない組織に未来はないなどのことを教えて頂きました。
ついで山口赤十字病院整形外科の加茂先生が関節リウマチに関する医療安全について講演されました。医師の説明義務について医療関係者が考える見解と一般社会が抱く疑問との乖離があること、リウマトレックスとステロイドの副作用の説明と同意書の紹介をされました。ヒューマンエラー対策として戦術的エラー対策も紹介され、理にかなったエラー防止策としてやめるという選択肢があること、エラー自体を減らすことなど教えていただきました。
11/8 西日本県内でウェブ講演会があり演者として講演しました。ウェブ講演は2回目ですがパソコンをみながらマイクに向かってしゃべるのはいつもと違うのですが、なんとか無事終了しました。週初めに鼻水が止まらずどうなることかと思いましたが何とか体調も戻ってよかったです。反響があればいいのですが・・・

 
日本腰痛学会には参加しただけではなく、しっかり発表もしてきました。高齢者の急性腰痛の6割は骨粗鬆症性脊椎骨折である、という演題です。当院を受診された65歳以上の高齢者の急性腰痛で6割が圧迫骨折だったという結果とその臨床上特徴をまとめました。
質問も多数あり活発なご意見をいただきました。発表後に運慶展を観に行きました。
11/3、4の日本腰痛学会で興味深かった講演からです。
早稲田大学スポーツ科学学術院の金岡先生の「トップアスリートの腰部障害の予防」の講演を拝聴しました。腰部の特定の部位に負荷が加わり続けて障害がおこる状態をstage1:当初は違和感を感じる程度、stage2:組織に微細損傷が生じ運動時痛が生じる、stage3:組織に炎症が生じる、stage4:軟骨変性、骨吸収や増殖などの器質的変化が生じる、stage5:最終的に変形性脊椎症に至るに分類されました。腰部に伸展負荷が加わり続けることで腰椎椎間関節障害、椎弓疲労骨折(棘突起インピンジメント)、仙腸関節障害が発生します。腰部に屈曲圧縮負荷が加わると椎間板障害が発生するとのことでした。筋筋膜性腰痛:myofacial corsetーlike syndromeには腹横筋などの深部筋(ローカル筋)を鍛える体幹の安定化と骨盤周囲筋のストレッチと可動域の拡大が必要とのことでした。
アスリートの仙腸関節障害では女性に多く、フェンシング、バトミントン、卓球に多く、1ヶ月以上持続する疼痛にはMRIで仙腸関節にSTIR高信号を呈することが多いそうです。疼痛除去テストで確認できると障害の原因の一つとして治療の一助になるとのことでした。
右投げで左内腹斜筋に負荷が加わり損傷が生じやすい、きつい筋トレが有効とは限らない、水泳選手 壁を蹴る時椎間板に負荷が加わるなども勉強になりました。
骨粗鬆症性新鮮椎体骨折治療のカクシンー臨床研究で得られた核心に基づく革新的な治療体系の実現を確信するーという講演を大阪市立大の星野教授がされました。椎体骨折の治療の原則は保存的治療ですが椎体後弯変形、遅発性麻痺は遷延性疼痛などが残存する例があります。コホート研究でMRIのT1強調像は骨折が治癒すると信号変化が消失しますがSTIR高信号は1年で半数以上残存するとのことでした。半年で予後不良例は1/4あり、運動歴のない人が多かったそうです。腰痛に関連する画像所見はX線圧かい率が初期は有用でしたが晩期には椎体不安定性が重要であり、持続的に痛みがあり、保存的治療では患者アウトカムに与える影響は少ないという結果で装具の違いでもエビデンスはありませんでした。骨癒合不全の予約因子はT2高信号、低信号広範型でありました。
予後不良因子を同定して治療介入するものとしてテリパラチドでは椎体圧壊を防止できないので早期BKPについての半年後の結果ではVASの改善率は有意差はなく、ADL低下に有意に改善して、椎体圧壊の改善率は有意に高く、3割に隣接椎体骨折も生じ、後方要素の骨折も関連したとのことでした。骨折後二カ月以内と以後でのBKPの比較では前者に有意に成績が良好でした。遺残椎体骨折が高齢者に与える影響としてADL低下、腰曲がり、ロコモやサルコペニアがありますが、日本整形外科学会のプロジェクトで後弯(SVA95以上)と既存椎体骨折が3つ以上、胸腰椎移行部、中下位腰椎骨折が予後不良という結果を提示されました。

 
11/2から東京に行き、11/3.4で腰痛学会に参加しました。初日は東京タワー近くで食事しましたが、スカイツリーより風情があって私はこちらの方が好きですね。

 
昼休みを利用して虎ノ門ヒルズ一階を歩いていて、イメージキャラクターのトラのもんを発見しましたので写真を撮りました。

午後から体外衝撃波の第一人者であるドイツのKnobloch教授のshock wave therapyー2017 updateーの講演がありました。集中型(focus)と拡散型(radial)がありますが最近は拡散型が多くなっているそうです。集中型は幹細胞を活性化するとのことでした。手根管症候群、ジャンパー膝、前十字靭帯断裂術後など様々な疾患に使用されておられました。デモンストレーションもありました。集中型では痛い場所の周辺で低出力から開始して400ショットぐらいしてから中心部を700ー2000ショット治療します。拡散型でも周辺部から開始してターゲットの筋筋膜をリリースするような手技も併用して治療します。
ケーススタディで三重のみどりクリニックの瀬戸口先生のプレゼンで衝撃波をどのように使用されているかを紹介されました。疲労骨折が最も多いそうですがばね指、シンスプリント、半月板の水平断裂、変性断裂などに特に効果があったそうですが、半月板の修復はないそうです。村上外科病院の村上先生のプレゼンでは2週間以上継続するシンスプリントに短期除痛、オスグッド病、足底腱膜炎の症例をプレゼンされました。阪奈中央病院の杉岡先生が足底腱膜炎、ジャンパー膝などに多く使用されており、足底腱膜炎に体外衝撃波と足底腱膜のダイレクトストレッチ、下腿三頭筋の遠心性ストレッチ、足部内在筋、外在筋トレーニングを併用することで除痛効果をより促進するとのことでした。船橋整形外科の平田先生のプレゼンではradial波でのハムストリング治療後に筋柔軟性が改善するかを発表されました。
10/29東京虎ノ門ヒルズでショックウェーブジャパン2017があり参加しました。
千葉大学の落合先生の講演が最初にあり、体外衝撃波は超音波と同じ圧力波の1種で非連続性の圧力波であるため局所で放出された熱エネルギーが血流を介して放散する時間があるので振幅を大きくしても安全性が損なわれにくく高エネルギーでの照射が可能であり、骨や石灰化など硬い組織に照射されると大きなエネルギーを放出するため骨関節組織に特異的に作用します。早期には除痛、マッサージ効果、遅発性には血管新生、腱新生、骨新生の効果が動物実験でも臨床の場でも期待できるそうです。次いで筑波大学の金森先生の下肢の障害に対する体外衝撃波治療について拝聴しました。体外衝撃波は下肢では腱付着部症などのオーバーユースによるジャンパー膝、アキレス腱付着部炎、足底腱膜炎や疲労骨折や骨折の遷延治癒に応用されていますがその臨床成績にはばらつきがあります。ジャンパー膝ではパラテノンや腱鞘の炎症と腱実質部の炎症の両者が関与しており、膝蓋腱の肥厚、膝蓋下脂肪体のSTIR信号変化がある場合には有意に成績が悪かったそうです。深部には衝撃波のfocusタイプが、浅層ではradialタイプが有効であろうとのことでした。PRP(多血小板血漿注入)との比較ではPRPの方が成績が良かったそうです。疲労骨折では早期癒合効果や有痛性の分裂膝蓋骨でも除痛効果があった症例を紹介されました。あさひ病院の伊藤先生が上肢の障害に対する体外衝撃波治療についての講演では、最初に座長の愛知医大教授の岩堀先生が自分の上腕骨外側上か炎に効果があったことを話されました。肩の石灰沈着性腱炎7例や上腕骨外側上か炎21例に使用された結果を報告されました。約50パーセントの有効率で、成績不良群は伸筋腱のMRIでSTIR高信号変化高度例でした。石灰層の縮小が50ー70パーセントに認めた報告があり、高出力の衝撃波に限って中等度のエビデンスがあるそうですが、腱板炎では集中型ではエビデンスがないそうです。有害事象としては上腕骨骨壊死の報告があり結節間孔を避けることが対策だそうです。上腕骨外か炎ではradialタイプでは有効との論文があるとのことでした。肘頭骨端線閉鎖不全や疲労骨折に対する有効例を提示されました。船橋整形外科の高橋先生が骨疾患に対する体外衝撃波治療について講演を拝聴しました。国際衝撃波学会で偽関節、疲労骨折、関節疾患を伴わない無腐性壊死、離断性骨軟骨炎に衝撃波が適応があると紹介されました。早期の大腿骨骨頭壊死に対して除痛には関与があるが壊死の改善はなかった報告や、特発性大腿骨内顆骨壊死の改善があった例、若年者の疲労骨折で特に難治性の中足骨疲労骨折に有効であったとのことでした。骨端症に対しての体外衝撃波の適応では低出力では影響がないとのことでフライバーグ病や坐骨結節骨端症に有効であった例を提示されました。