8/10山口県医師会産業医研修会があり、山口大学整形外科田口教授の「職場における肩こりについて」の講演を拝聴しました。肩こりの定義として首肩背中の筋肉の緊張を伴う違和感や鈍痛であり、肩こりは女性では一位で男性では二位と非常に多い疾患です。夏目漱石の門の中に肩の凝りという表現があります。人種差はないと言われており、範囲は肩関節と項部の間、肩甲間部になります。肩関節は肩甲骨と肋骨は離れていることが特徴です。肩甲骨の進化として体軸にくっついていた肩甲骨が背部に移動した霊長類になると二足歩行で手が自由になったが、肩甲骨が安定性を失い上腕により牽引され、進化に適した使い方をしていないことなどが肩こりが多い理由だそうです。首には頭の重さがかかり、肩には腕の重さがかかり、頸部肩には体重の20パーセントの負荷がかかります。肩こりに関係する筋肉は僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋であり、鎖骨の角度で撫で肩と怒り肩が分類され、同じ姿勢を続けると筋の緊張が亢進すると筋肉の疎血が生じ発痛物質が産生されて痛みを感じます。筋疲労による肩こりでは筋肉の持続的緊張、過度の首の運動や異常姿勢が原因で、対策としては首の運動だけでなく、肩甲骨のストレッチも有効ですが撫で肩には上部僧帽筋のストレッチはよくないとのことでした。注意すべき肩こりとして長く続いている、寝ていて痛み、手の脱力などがあり、若年者の肩こりが3カ月以上持続すればMRIなどの検査を考慮することを強調されました。胸郭出口症候群、肩関節周囲炎についても説明されました。
第106回山口県臨床整形外科医会教育研修会に参加しました。産業医大第一内科の斎藤准教授の「関節リウマチに対する最新の薬物治療」と三重大学麻酔科丸山教授の「弁慶の泣きどころーアセトアミノフェンで上から痛みをおさえるー」を拝聴しました。関節リウマチの治療として抗炎症薬やステロイド剤などの対症療法と抗リウマチ薬と生物学的製剤の根本療法があります。ステロイド剤は短期間に少量使用し,3 ヶ月以上使用する場合は骨粗鬆症薬を併用することが必要です。抗リウマチ薬はメトトレキセート、アザルフィジン、タクロクリムス(プログラフ)などがありますがそれぞれ副作用に注意して使用する必要があります。タクロクリムスはステロイド剤に併用すると非常に即効性があるそうです。メトトレキセートが関節リウマチの標準治療法ですが限界もあり、X線での関節びらん(関節破壊)は防止できない場合があります。その後炎症性サイトカインを標的とした抗リウマチ薬の生物学的製剤が登場して関節リウマチの薬物治療に大きな変革があり、次々と生物学的製剤が登場し、約7割に関節破壊を防止できるようになりました。関節リウマチの薬物治療の目標は早期診断して骨関節破壊を抑制することであり、リウマチレックスによるT2Tという目標達成に向けた治療の導入が重要であり、指標としてCDAIといった基準が設定されています。リウマトレックスで寛解率が50パーセントであり、生物学的製剤の導入で70-80パーセントの寛解率になりました。生物学的製剤(バイオ)には抗TNFα抗体、IL6受容体抗体など数種類が開発され、後発品も治験中とのことです。完全寛解100パーセントに向けたリウマチ治療戦略面として早期診断してリウマトレックスによる早期治療介入し的確な生物学的製剤の積極的導入であることを強調されました。最新の治験ではリウマトレックスの早期導入とステロイド剤の短期間併用を行い、リウマトレックス禁忌の場合は他の抗リウマチ薬とステロイド剤の併用して半年で治療効果を確認しつつ治療の変更(生物学的製剤の導入を含めて)を考えるということを教えて頂きました。