第7回山口中央OLS研究会

7回山口中央OLS(骨粗鬆症リエゾンサービス)研究会がウェブでありましたが幹事として会場参加しました。最初に山口県立総合医療センター薬剤部の渡邊先生が「当院における大腿骨近位部骨折患者に対する骨粗鬆症治療について〜現在までの取り組みと今後の課題〜について発表されました。骨粗鬆症治療率は20%で骨粗鬆症治療継続率が低いことが問題とされています。2013-2017年の大腿骨近位部骨折患者さんで骨粗鬆症治療されていたのは23%でしたが新規薬物治療開始が18%であったそうで急性期病院で短期入院のため骨粗鬆症治療導入、継続の難しさがあります。骨粗鬆症マネージャーも含めた会議を行うことで大腿骨近位部骨折クリニカルパスを改定されました。薬剤師による骨粗鬆症治療歴の確認、DEXAによる骨密度測定、転院の際の紹介状に骨粗鬆症治療依頼文を添付することで骨粗鬆症治療継続を促すことをされ、クリニカルパス改定後の新規処方と治療薬継続は43%と増加しましたが退院半年後の治療継続率はやや減少していた結果からクリニカルパスの2回目の改定で入院中にビスフォスフオネート製剤を開始することとされた結果、退院半年後の治療継続率が57%と上昇したそうです。クリニカルパスが適応できない患者さんに個別の介入が必要であるということに関して本年から二次性骨折予防管理料加算が算定できるようになったのでクリニカルパスの改定により歯科へのコンサルテーションの自動化や採血での骨粗鬆症関連検査、個別カンファレンスを行い継続率の向上を目指す取り組みを発表されました。

次いで沖本クリニックの沖本院長が地域医療としての骨粗鬆症対策ー呉市での実際の取り組みーについて講演されました。沖本先生は高名な先生で講演の内容もわかりやすく勉強になるので楽しみに拝聴しました。先生のクリニックのある呉市で骨粗鬆症の重症化予防プロジェクトに取り組まれました。骨粗鬆症は薬物に加えて栄養、運動が基本です。日本人はビタミンD不足が多く天然型ビタミンDはサプリメントとして、定期的な運動・骨に対する荷重は骨粗鬆症予防として有用とのことでした。骨粗鬆症治療継続率の向上は受付の教育が重要とのことでした。大腿骨近位部骨折に有効性が高い薬剤はビスフォスフオネート、デノスマブ、ゾレドロン酸、ロモソズマブです。椎体骨折は大腿骨近位部骨折はその6倍といわれ、呉市のデータから椎体骨折の早期発見が重要、ビスフォスフオネート製剤による顎骨壊死の連携の一貫として歯科検診でパノラマ撮影で骨粗鬆症早期発見した際に整形外科への紹介して頂く連携、薬剤のデータをお薬手帳に残す試みも紹介されました。呉市では顎骨壊死発生率はビスフォスフオネート製剤のでは0.138%デノスマブでは0.165%1000人に1人とのデータをお示しになりました。デノスマブは中止すると多発性骨折発生の危険性がありますので中断した方には呉市が連絡して受診を促す取り組みをされており骨折予防に寄与しているとのことで地域医療の取り組みについて勉強になりました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。