アセトアミノフェン適正使用セミナーに参加しました

1/12アセトアミノフェン適正使用セミナー in山口が山口グランドホテルであり、参加しました。山口大学整形外科の徳重先生と岩国医療センター貴船先生のミニレクチャーの後にアセトアミノフェン温厚知新〜経口剤から注射剤まで〜を拝聴しました。徳重先生は人工股関節置換術後疼痛にアセトアミノフェン静注液の使用経験を発表されました。アセトアミノフェン静注液は経口剤投与が困難な場合に適応があるので手術後の患者さんに主に適応になります。持続硬膜外麻酔を併用した例と併用しない例で術中術後投与の検討をされました。肝機能の上昇例もありましたが有意差はなく、持続硬膜外麻酔を併用しない例でアセトアミノフェン静注群が非投与群より術後鎮痛剤使用が少ないという結果を示されました。

獨協大学麻酔科山口教授の講演では、ドイツのマインツ大学では術後アセトアミノフェンを静注から投薬で投与していく治療をされているそうです。アセトアミノフェンは解熱剤のみでなく、鎮痛剤としても有用であり、新生児から高齢者、妊婦にも安全に投与できます。米国では消炎鎮痛剤投与は高齢者、胃潰瘍既往、抗凝固剤使用例、腎機能障害例には慎重投与であります。侵害受容性疼痛には消炎鎮痛剤の投与は短期間に止めるべきであるとのことでした。アセトアミノフェンは中枢性に作用するので安全性が高いのですが、少量では鎮痛効果が弱く、肝機能障害の副作用が懸念されますがこれもほとんど心配する必要がないそうです。一回に1000mgを推奨され、腰痛症や変形性膝関節症にも十分効果が期待できるそうです。高齢者でも一回は1000mgで投与間隔を空けることを推奨されました。術後疼痛に対するアセトアミノフェン静注はオピオイドより副作用が少ない長所があり、包括的な鎮痛によりオピオイド投与の減量を図るのに有用であるとのことでした。米国では術後8割はアセトアミノフェンを併用しているそうです。アセトアミノフェン静注を行うことで持続硬膜外麻酔のオピオイドの量を減らせるので早期のリハビリも可能であるとのことでした。術後アセトアミノフェンの投与は数日は必要とのことで、現時点では適応が限定されるので難しい点があるそうです。リスクの高い肝機能障害例、アルコール依存、消耗疾患には注意する必要があります。山口教授の推奨する疼痛治療はアセトアミノフェン単独で投与して効果が不十分の場合に運動療法、弱オピオイドを併用するということを強調されました。鎮痛剤には効果が強く、副作用が少なく、対費用効果が高いという3つの長所があるということで大変参考になりました。
 


 

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。