日医かかりつけ医機能研修制度の研修会の最後の講義

かかりつけ医の在宅医療・緩和医療
世界の医療の課題として専門領域の医療の偏重、機能分化に伴うケアの断片化、自由放任主義の医療体制のひずみが挙げられ、解決策として高度な検査機器や治療追求への警鐘、患者の個別性を重視したケア、包括的で統合された対応、ケアの継続性を維持、初期治療を担う医師が常に変わらず信頼される存在であることがあげられており、プライマリケアを担うかかりつけ医の強化が必要となるそうです。プライマリケアが発達すると総死亡率の低下に加えて若年死亡率の低下と慢性疾患の罹患率も低下するので、政府の政策である地域医療構想と地域包括ケアシステムの中でかかりつけ医の診療所は地域医療の中核を担う役割を期待されています。在宅医療は通院困難な患者さんで脳血管障害後遺症、認知症、老人性運動器疾患及び関節リウマチ、慢性呼吸不全、慢性心不全、腎不全、老衰、神経難病、悪性腫瘍末期などが対象となります。在宅患者のケアは多職種連携が重要で訪問看護や訪問リハビリ、訪問歯科、薬剤師、ケアマネージャーと連携することが必要となります。診療情報の共有、介護情報の共有を行い、在宅ケアカンファレンスを定期的に行う必要があります。在宅診療実践のための取り組みの工夫、外来と在宅の時間配分、24時間対応における日中の医学管理や夜間対応には看護師連携による24時間対応であったり、3人以上の医師の連携、急性期病院連携、介護施設との連携などが対策としてあげられました。また在宅緩和ケアについても多職種連携が重要であり、患者の意思決定支援には看護師が重要な役割を果たすとのことでした。
最後に症例検討があり考えさせられましたが、その中で家族思考型プライマリ・ケアという領域を紹介され、生物心理社会アプローチの中で理解され、ヘルスケアの主役は家族という背景をもった患者さんであり、家族への介入で情報の記録、さざ波効果、家族を通常診療に招く、家族会議、家族療法という5ステップを紹介されました。
10時から17時という長丁場でしたが非常に勉強になりました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。