午後から終末期医療、褥瘡と排泄についての講義でした。高齢者医療において終末期の医療介護の在り方、特に本人の尊厳あるいは最期の迎え方について医療者がどう寄り添うかが課題であるとのことでした。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは将来意思決定する能力を失った場合に備えた患者によるあらゆる計画であり患者、家族、医療者の話し合いを重視して、書面を残すことにこだわらず患者の希望に沿った医療やケアを提供する事ことが重要とのことでした。次いで褥瘡と排尿排便ケア管理について拝聴しました。床ずれ予防、自尊心を失わない快適な排泄促進、清潔維持、負担軽減、ポリファーマシーを避けるとのことでした。腹圧性、切迫性、混合性、溢流性、機能性尿失禁がありタイプを知ることが重要とのことでした。過活動性膀胱では骨盤体操(骨盤底筋群の体操)が有効とのことでした。男性の尿失禁は前立腺肥大との合併が多いのでα1アドレナリン受容体遮断薬が第一選択です。高齢者の便秘は腸蠕動が低下している弛緩性便秘、肛門部に溜まる嵌入便に気をつけることを教えて頂きました。褥瘡については体位変換、適切なマットレスの使用、タンパク、エネルギー低栄養状態が関与しています。好発部位は仙骨、大転子、踵、坐骨結節の順で、創の分類(黒色期、黄色期、赤色期、白色期)に応じた治療、ドレッシング材の適応は感染、深部に達するものは適応外であることなどリスクアセスメントが大切です。次いで多疾患合併症例について講義がありました。高齢者による様々な科から投薬されるポリファーマシーによる副作用が問題があり、減処方のプロトコールとして全ての薬剤の処方理由を確認し、有害事象のリスク確認、薬剤の潜在的なリスク、ベネフィット、中止薬剤の優先順位の決定、薬剤中止とモニタリングという手順を踏むことを提案されました。患者が疾患についての理解度も重要とのことでした。経過を見ながら介護保険が必要であるかを判断すれば本人が介護保険の申請する必要があり、ケアマネジャーと連携して受けるサービスを決定、サービス担当者会議を行いながらゴール設定に沿ったリハビリテーションの提供を行う手順も紹介され参考になりました。多疾患合併患者に対して治療が相互に影響することをイメージして介入すること、疾患の進行と加齢を踏まえて本人の希望、家族背景、QOLまでを考慮して治療方針を決定すること、専門医と患者・家族の橋渡しをすること、多職種と連携して自宅療養を支えることを提示されました。最後にかかりつけ医の社会的処方についての講義でした。社会的処方とは地域医療機関が人々をリンクワーカー(ケースワーカーなど)に紹介する行為とのことで、主治医の意見書の重要性を強調されました。ガンの5年生存率は約6割に達することからガンももはや慢性疾患という認識が必要で、仕事を持ちながら通院しているのは約32万人いるが収入は減収になることもあり、癌患者のかかりつけ医は体力、メンタルヘルス問題も含めて治療と仕事の両立支援、復職支援・就業継続に関する主治医の意見書を書くことも重要とのことでした