第一回スポーツメディスンコンディショニングフォーラムに参加しました


1/13 東京で第1回スポーツメディスンコンディショニングセミナーがあり参加しました。運動神経と神経筋機能・バランスについて大阪大学の中田研先生、小笠原先生、大貫崇先生(トレーナー)が講演されました。HCPというスポーツ選手のケアに関わる医療従事者、親、トレーナーなどを含めてヘルスケアプロバイダーというカテゴリーを紹介されました。スポーツ医学の研究方法として基礎研究のみでなく、橋渡し研究、逆橋渡し研究などもあります。中田先生はパフォーマンス定量化に加速度センサーや活動度計、レーザーレンジなどを用いており、コンディション解析としてサッカー選手でパフォーマンス(METS)とメディカル情報(CPK)は弱い相関があるということもわかってきた、サッカー選手でハイパフォーマンスの選手は運動強度が高く、日々の運動強度のばらつきが少ないこと、スポーツ外傷やパフォーマンス向上の予測にもつながる可能性なども示唆されました。次いで大貫先生がスポーツコンディショニングには運動療法が必須であり、ドクター、理学療法士、栄養士、治療院などのケアの輪をどう作っていくか?アプローチとして全身をみる、リハビリの定量化の方法として床反力計を用いてモディファイドドロップスクワットを視覚化する、筋骨格系のトレーニングだけでなく神経・呼吸器系にアプローチする、呼吸エクササイズ介入による動的バランスの変化を測定することなども今後必要とのことでした。次いで小笠原先生が神経筋機能バランスについて、スポーツ外傷の予防に前十字靭帯損傷の損傷メカニズムは膝単関節のみに注目するのではなく、環境に対する不適切な姿勢制御に注目され、かかと減速→体幹の後傾→重心から離れた接地で障害が発生する、前足部設置よりこうそく部接地のほうが膝外反、内旋生じやすいことなど教えて頂きました。The 11+などの予防プログラムはメニューではなく危険な動きと安全な動きのリスク教育などコンセプトが必要とのことです。

体外衝撃波ーどうやって使う?何に効く?積極的保存療法という熊井先生、佐竹先生の講演を拝聴しました。衝撃波は圧力の小さい連続波である超音波より約1000倍の圧力の大きいもので、集中型と収束型があり、効果として除痛と組織修復作用で、自由神経終末の破壊や神経伝達ペプチドの減少に伴う疼痛抑制効果、VEGF,eNOS,PCNAなど血管新生による腱皮膚の組織修復促進効果、BMPを介する骨形成促進効果、神経筋接合部への介入による痙性抑制効果などが証明されているそうです。国際的には慢性腱障害、骨障害、皮膚障害などに使用されていますが日本では足底腱膜炎のみしか保険適応が認められていません。拡散型では(当院もそうですが)運動療法の中で衝撃波とストレッチと併用して使用されているそうです。最近の論文で集中型で成功率50-60パーセントという成績、1週おきに2000発を三回がいいという報告などお話されましたがありますがまだ検討段階とのことです。又腰椎疲労骨折、種子骨障害などにも使用されているとのことでした。先生が強調されていた積極的運動療法というワードが印象的でした。次いで阪奈中央病院の理学療法士の佐竹先生の講演がありました。足底腱膜炎だけでなく、テニス肘、肩関節周囲炎、アキレス腱付着部炎、創治癒遅延などに使用されるそうです。大事なのは疼痛、内出血が伴う治療であることなどオリエンテーションを十分すること、照射部位の決定には時間をかける、疼痛部位だけでなく組織全体に照射することも参考になりました。

ランチョンはJim Richards先生の話を聞きました。前十字靭帯損傷術後の装具装具したリハビリにより健側の神経促通も促進するそうです。又装具装着した方がrunning,cutting,pivot turnという動作で約10パーセント可動域が増加するそうです。(装具があると膝屈伸が安心してできるからか?)テーピングと装具の比較ではテーピングの方が前方リーチが改善していましたがほぼ差はなく、装具の方が内外反の不安定性には制動力が高くkinesiophobia(運動恐怖症)の軽減につながるそうです。又重心動揺計のみでなく筋力訓練を組み合わせるとよりリハビリ効果が上がることも述べられました。

機能的腰痛をどう診て、どう対処するか?整形外科、理学療法士、アスレティックトレーナーの立場からというテーマで金岡先生、成田先生、鈴木岳先生の講演がありました。健康科学大学の成田先生は理学療法士の立場から医療現場で医師の指示のもとにどの組織にどんなメカニカルストレスがかかるか?発痛部位の特定して対処法を考えるそうです。理学療法士は特にメカニカルストレスを減弱することに関与します。特に問診が重要で疼痛部位の仮説を立てて疼痛誘発テスト、疼痛除去テストで検証されることをデモンストレーションを交えて説明されました。トレーナーでR-body PROJECT代表の鈴木岳先生は肩の可動域制限という機能制限が腰痛に関与している例を出されてファンクショナルトレーニングを用いた評価をお話しされました。mostabilityというmobilityとstabilityを考えること、重力下、非重力下、患部外アプローチキネティックチェイン、サブコンシャスアプローチ(無意識で正しい動作ができること)をして、肩屈曲、無意識に胸椎伸展ができるように指導されるそうです。

早稲田大学の金岡先生は腰痛の評価で組織の同定、障害程度の評価、障害メカニズムの理解がありアスレティックリハビリテーションが重要であることを述べられました。画像所見に異常がない腰痛には前屈で痛い場合は椎間板性、後屈で痛い場合は椎間関節性のことが多くあることが多いそうです。

最後に高橋周先生がコンディショニングに役立つ運動器エコーで講演されました。東おあば台整形外科ではエコーを医師、理学療法士、トレーナーがエコーを共通言語で行なっている様子を紹介されました。足関節捻挫では前距腓靭帯、踵腓靭帯、二分靭帯、小児の剥離骨折の状態が描出できます。又経過を見ていきます。疲労骨折もエコーの方がレントゲン写真より早く描出できます。SMIというドップラーより新しい血流の検査を紹介されジャンパー膝やアキレス腱炎などの評価ができるそうです。硬さの評価はエラストグラフイーで評価されるそうです。エコーで関節内か関節外か?などをわかるとリハビリの指示もより伝わりやすくなるとのことでした。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。