山口県関節リウマチ学術講演会

9/12山口県関節リウマチ学術講演会が山口グランドホテルであり参加しました。最初に山口大学の関先生の関節リウマチ診療における関節エコーの有用性の講演がありました。関節リウマチの関節エコーの評価方法と免疫抑制薬、生物学的製剤導入のポイントや関節エコーを併用することで早期診断、早期治療、治療評価、寛解や再発の指標の有力な手段となることを教えていただきました。次いで山口大学第二内科の池上先生の関節リウマチにおける腎障害の講演を拝聴しました。関節リウマチにおける腎障害は22パーセントというデータがあり最近の論文では25パーセントで治療経過中に半数は生じるとのことでした。原因として膜性腎症31パーセント、IgA腎症21パーセント、続発性のアミロイドーシスの順で多いそうです。膜性腎症は抗リウマチ薬によるものが多いですがリウマチに伴うものもあるとのことでした。IgA腎症もリウマチ固有の腎病変によるもの(罹病期間や重症度と関連)と薬剤性(抗TNF-α)のものがあり、鑑別して治療されることを教えていただきました。

特別講演として産業医大内科の田中教授のリウマチ性疾患治療の新展開について拝聴しました。関節リウマチ治療の基本的な考え方、早期治療、寛解、Precision medicineについての講演をされました。関節リウマチの治療として1897年アスピリン、1955年プレドニンが開発されましたが、その後リウマチが免疫疾患であることがわかってきて抗リウマチ薬、生物学的製剤が導入されました。2016EULAR治療アルゴリズムでMTXにステロイドを短期間で使用することを推奨されています。リウマチ治療は多職種で治療しておられるそうですが、産業医大ではリウマチ治療前の2240例中CTスクリニーングで22例ガンが発見されたそうです。呼吸器疾患の既往があり70才以上の高齢者の関節リウマチ患者さんには肺炎予防として肺炎球菌ワクチンを受けてから治療されるそうで、リスク管理をしっかりされておられるそうです。関節リウマチの生物学的製剤導入後10年で疾患活動性が1/3が中程度あるそうですので早期見直しも必要とのことでした。インフリキシマブは投与量の増量とMTXが増量が認められてから寛解率が30パーセント代から50パーセント以上に改善されたそうです。休薬はリウマチ発症早期の場合は半数が成功したそうですが発症後二年以上では深い寛解が得られなければ休薬が難しいそうです。関節リウマチの治療戦略では関節破壊ゼロを目指すことが重要で中止して早期に寛解を維持できることも今後の目標だそうです。生物学的製剤はベーチェット病と乾癬性関節炎が有効であることも教えていただきました。乾癬性関節炎は腱付着部炎から関節破壊が生じるそうです。末梢リンパ球のフローサイトメータを使用して生物学的製剤の戦略的治療(これをprecision medicineというそうです)を行うと治療成績が上がるとのことでした。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。