平成30年度かかりつけ医認知症対応力向上研修その1

8/5 平成30年度かかりつけ医認知症対応力向上研修に参加しました。かかりつけ医の役割編として清水先生の講義でしたが認知症の人や家族を支えるためにかかりつけ医ができることを理解することがねらいです。かかりつけ医とはなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師であります。認知症の早期発見、早期治療が重要であり、かかりつけ医に求められる認知症の診療は認知症の人に気づく、受け入れる、家族を気遣い支える、地域でみることを意識することが求められます。政府の認知症施作推進総合戦略、早期からの認知症高齢者支援対策、地域包括ケアシステムを介した介護サービス、主治医意見書の役割、認知症の意見書の書き方(認知機能、ADL,BPSD,処方内容とその影響、現在受けている支援、今後必要な支援、生活環境、家族の状況と介護負担、経過、徘徊の頻度、現在ある困難や危険性、身体合併症、評価に際しての留意事項)など勉強しました。長谷川式スケールの記載(HDS-R15/30)、ADL×BPSDによる認知症日常生活自立度についても教えて頂きました。BPSDは家族や周囲の人たちが対応に苦慮する精神症状や異常な言動のことで異常行動(徘徊、迷子、叫声、昼夜逆転、火の不始末、摂食行動)と精神症状(幻覚・せん妄、抑うつ、不眠、不安、焦燥、意欲・発動性の低下)であります。
次いで認知症の診断と治療編として兼行先生が講義されました。DMS-5に基づく新しい認知症の診断基準では1つ以上の認知領域(複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)が以前の機能レベルから低下している、認知機能の低下が日常生活に支障を与える、認知機能の低下はせん妄のときのみに現れるものではない、他の精神疾患(うつ病や統合失調症)が否定できるとなります。認知症には中核症状とBPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia:行動・心理症状)があります。
アルツハイマー型認知症が7割で健忘症状に失語、失空間障害が主体とのことでした。
レビー小態体型認知症は注意や覚醒レベルの明らかな変動を伴う認知機能の動揺、現実的で詳細な内容の幻覚が繰り返し現れる、パーキンソニズムがあります。前頭葉側頭葉変性症により生じる認知症は、行動障害型と言語障害型があり、運動ニューロン疾患型認知症や嗜銀顆粒性認知症なども紹介されました。血管性認知症は脳血管障害に伴う認知症でCT,MRIやSPECTなどで脳腫瘍、脳出血、慢性硬膜下血腫など除外診断をします。認知症の原因で治療できるもので高カルシウム血症なども注意すべきとのことでした。
アルツハイマー型認知症ではβアミロイドの脳内異常沈着が進行して発症するのでPETによる早期診断もできるようになってきているそうです。MRIでは側脳室下角の拡大と海馬の萎縮の左右差が特徴的です。
向精神薬には抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、気分安定化薬があり、特に抗不安薬は日中の投与を極力避けること、睡眠薬は夜間の転倒リスク、健忘リスクに注意が必要とのことでした。高齢者認知症の薬物治療は成人投与量の1/2の少量から開始し、なるべく薬剤をシンプル、一包化すること、介護者にも服薬を確認することも必要とのことです。睡眠薬には入眠困難、中途覚醒、早期覚醒にあった処方が必要で、睡眠段階に与える影響として徐波睡眠が減少すること、睡眠補助薬としてクエチアピンがありせん妄治療に有用であることなども教えて頂きました。不安に対して抗不安薬より社会性不安、全般の不安、パニック障害にはSSRIという抗うつ薬が使用されるそうです。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。