リクラストエクスパートフォーラム

リクラストエクスパートフォーラム が大阪であり、参加しました。基調講演で近畿大学整形外科の宗圓教授の「我が国における骨粗鬆症治療の変遷」についていけ拝聴しました。

平均寿命に関して骨粗鬆症、大腿骨近位部骨折の関与は内科的疾患に匹敵すると言われています。骨粗鬆症患者さんは推定1280万人と言われています。脊椎骨折や大腿骨近位部骨折は加齢とともに増加し、大腿骨近位部骨折は5年生存率が50パーセントで生命予後に直結します。大腿骨近位部骨折は日本では80歳代で手術例がやっと減少に転じましたが、90歳代では増加しているとのことでした。我が国では骨粗鬆症診断基準が1995年に出され、1998年に骨粗鬆症治療ガイドラインが出され今までに改訂を重ねています。2012年の最新の診断基準では脊椎骨折、大腿骨近位部骨折があれば骨粗鬆症であり、その他の脆弱性骨折では骨密度が若年平均の80パーセント未満で骨粗鬆症、骨折がない場合は骨密度が若年平均の70パーセント未満となっています。骨粗鬆症の薬物治療開始基準として脆弱性骨折がなく、骨密度が若年平均の80パーセント未満でもFRAXで15パーセント以上、両親の大腿骨近位部骨折がある場合には治療開始するとされています。骨粗鬆症治療薬でビスフォスフォネート製剤が最も使用頻度が高いですが内服薬、静脈注射(1ヶ月に1回と1年に1回があり)があります。最近発売されたリクラスト(ゾレドロン酸)は年1回の静脈注射薬で新規椎体骨折を二年で62パーセント抑制され、非椎体骨折も有意に抑制されました。副作用として発熱が30パーセント、関節痛10パーセント、インフルエンザ様反応7パーセントありました。副作用対策でアセトアミノフェンやイププロフェンを数日内服することで軽減できるとのことでした。腎障害のある患者さんには慎重投与です。またビスフォスフォネート製剤と顎骨壊死の関連性は2017年のポジションペーパーではビスフォスフォネート製剤を4年以上投与されている場合、抜歯など外科的処置が必要な場合は歯科と相談して行うことが出されましたが基本的には休薬は必要ないとのことでした。神戸大学の口腔外科の論文では顎骨壊死にビスフォスフォネート製剤の休薬に関連性がなかったが、抜歯後の開放創は顎骨壊死の危険因子となるそうです。我が国の骨粗鬆症治療の現状は骨折患者の2割であり、継続率が低い(50パーセント未満)ので骨粗鬆症学会が骨粗鬆症リエゾンサービスを推奨しており、医師のみでなく、メディカルスタッフが関与することで初発骨折の予防と骨折連鎖の予防と治療の継続の維持が目的です。

ついでカリフォルニア大学のBlack教授の骨粗鬆症性脊椎骨折の予防:新しい効果的な治療という講演があり、私にとっては久しぶりにネイティヴスピーカーの講演でした。Black先生は約6500例のアレンドロネート製剤やリセドロネート製剤の大規模試験や様々な論文があり紹介されました。ゾレドロン酸投与の7000例の3年の結果で脊椎骨折を70パーセント、大腿骨近位部骨折を約41パーセント、非椎体骨折を25パーセント抑制したとのことで、顎骨壊死は1例でプラセボ例でも1例でいずれも治癒したとのことでした。非定型骨折は頻度は少なく、大腿骨近位部骨折の抑制率の方が上回るとのことでした。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。