第78回 外科医も肩こり腰痛が多い!?

勤務医で脊椎外科医として一日中手術場に入って手術していたのは8年以上前になりますが、手術中は集中しているときはアドレナリンが出ているので特に苦痛は感じませんでしたが、喉が乾くとマスク越しにストローで水をのませてもらったりしたり、立ちっぱなしがきつくて途中で座らせてもらったりしたことが今となっては懐かしい思い出です。最近の報告で外科医が手術後に頚部痛が62%増加し、腰痛が45%、背部痛が43%という報告がありました。以前このコラムでテキストネック症候群(いわゆるスマホ首)について紹介した際にも述べましたが頚椎が15度屈曲すると14kg60度屈曲すると30kgの重量が頚背部にかかるのでこの研究の結果もうなずけます。手術野が狭いところで下を向いて手術をせざるを得ない外科医ほど首腰への負担が多いということになり、内視鏡手術の場合、モニターを見ながら手術ができるのでその負担が少ないので、医学技術の進歩は外科医の肉体的負担を少なくするという意味においても今後ますます必要となることでしょう。やはり外科医も姿勢への意識や頚椎腰椎のセルフエクササイズは必要であると外科医を引退してから改めて思います。

 

参考文献  J Am Coll Surg(2020; 230: 554-560)

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。