日本いたみ財団の慢性疼痛研修会

11/8 日本いたみ財団主催で中国地区の慢性疼痛研修会がzoomであり参加しました。

まず山口大学麻酔科原田先生の講演から痛みの多元性で痛みには複数の原因がある、痛みには主観的意識的なこころの要素がある、身体器質的疼痛(侵害受容性と神経障害性)と心因的疼痛はオーバーラップする、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、nociplastic(侵害可塑性?)な疼痛とは痛みの知覚異常、痛覚過敏が生じた状態である、半年以上続く運動器慢性疼痛は厚労省の調査で15%で働き盛りの青壮年に多いとのことでした。

次いで山口大学整形外科鈴木先生からICD-11 における慢性疼痛の分類について解説があり慢性一次性疼痛と慢性二次筋性疼痛という分類、慢性術後疼痛 脊椎手術の10-15%、人工膝関節手術後は軽度を含めて50%に及ぶ報告もある、複合性局所疼痛症候群は判定指標があるが診断や重症度判定には用いない、事故に起因する慢性疼痛は外力の程度、身体所見に比べて痛みが重篤化、遷延化するとのことでした。

次いで山口大学リハビリ科の田原先生の講義があり、痛みの評価法についてマクギル評価票、定量的知覚試験(スタティクとダイナミック)の紹介で反復侵害刺激で痛みの増幅を可視化する方法とコンディショニング刺激の前後に他の部位の侵害刺激の減弱をみる方法、神経機能評価、痛みの破局化の評価(PCS)、自己効力感の評価(PSEQ)、不安・抑うつの評価(HADS)、疼痛生活尺度評価(PDAS)QOL評価など紹介されました。

山口大学麻酔科森先生の講義で慢性疼痛の薬物療法についてで、NNT 一人に治療効果を得るために何人を治療する必要があるか、NNH 何人治療したら副作用が出るか?など勉強になりました。最期に山口大学精神神経系の樋口先生の講義で慢性疼痛治療の心理療法でチームでの治療、運動療法が重要、情動が痛みを変化させる、コミュニケーションスキルとして何に困っているか?共感と支持、問題点の共有、患者さんと協働で問題解決する(患者主体)、傾聴、共感、認証、認知行動療法について具体例、支持的精神療法(傾聴・受容・共感)との違い、治療はマラソンで走るのは患者本人で(まず土台作り)、医療者はコーチ(ペーシング)、家族は心から応援(コーチにならない)、自己治療を目指すことを教えて頂きました。

最後に症例検討ワークショップがあり、具体例な慢性疼痛の症例に対しグループディスカッションしたのち発表があり様々な意見が出て勉強になりました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。