かかりつけ医の倫理に求められているものとして、患者の尊厳への配慮、地域住民から信頼される、倫理的に適切な意思決定プロセスを踏んだ在宅看取り、地域包括の視点から多職種協働が実践できることです。
医師と患者関係は医師は患者の最善の利益-幸福のために行動し、患者の尊厳に配慮しなければならない。歴史的に医師の考え方や価値観が強調されるパターナリズムモデルという考え方や患者の考え方や価値観が強調される情報提供型モデルではなく、医師と患者双方が意思決定に参加する、分担された意思決定から共有された意思決定を行う相互参加型モデルを目指すとしています。ヒポクラテスの時代から行われていた善意をもつ徳倫理から善行を前提とする倫理4原則が紹介されました。倫理4原則とは自立(自己決定)尊重原則、善行原則、無危害原則、公正原則からなります。意思能力がある場合、自己決定を優先し、意思能力が不十分な場合共有された意思決定を行い、意思能力がない場合、感情、最善の利益への配慮を行うことになります。
インフォームドコンセントは情報の開示、理解、自発性、意思能力、同意の5つの要素からなり、情報の開示については病名や病態、検査や治療の内容目的方法必要性有効性 その治療に伴う危険性と発生頻度 薦められた治療を拒否した場合に生じる結果の多岐にわたります。
守秘義務と個人情報保護については、守秘義務は相対的義務であり、第三者への潜在的危険が大きいなど正当な事由があれば解除でき、個人情報の保護の2つの柱は目的外使用の禁止と第三者への提供禁止とのことでした。
適切な看取りに入るために考えなければならない問題として医学的問題、倫理的問題、法的問題、社会的問題があり、それぞれのケースにふさわしい対応を考えなければならなりません。本人の意思能力が正常であればそれを尊重し、確認できない場合、代行判断となりますが、患者さんにとって最善の利益判断を行うことが重要であるとのことでした。家族による同意は家族に同意権を付与しているのではなく、あくまで本人の利益のためになされる場合にのみ正当化されます。終末期医療に関する倫理的問題はアドバンスケアプランニングが重要で在宅医療においてもDNAR(POLST)指示をを適切に作成することとのことでした。
次いで生活習慣病についての講演では平均寿命と健康寿命の差を縮めるか(健康寿命を延ばすか)が重要で介護の必要となる原因である脳心血管障害、血管性認知症、フレイル(高齢による脆弱)が関与しており、メタボリックシンドロームを基盤とする血管障害とロコモティブシンドロームをコントロールすることが重要であるとのことでした。
生活習慣病の患者数は高血圧症3970万人、脂質異常症4220万人、糖尿病820万人、喫煙2480万人存在し、高血圧と脂質異常症の両者の管理ができていない場合もあり、両者の厳格な治療群の有効性を示されました。最近では慢性腎臓病も脳血管障害の危険因子として注目されています。
脳・心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートが日本医学会と日本医師会から2015年4月に発表されておりスタチンや降圧薬の治療エビデンスはコレステロールや血圧の低下は効果があり、動脈硬化性疾患予防のための生活習慣の改善として、禁煙、過食抑制し標準体重の維持、魚大豆の摂取増加、野菜果物未精性穀類海藻摂取増加、食塩多く含む食品の摂取控える、アルコール過剰摂取抑制、有酸素運動30分以上などを勧めています。