これも耳慣れない言葉と思いますが、脊柱の安定性には脊柱に直接付着するローカル筋(体幹深層筋)と脊柱から離れた位置から作用するグローバル筋(体幹浅層筋)に分類されます。ローカル筋のスタビライザー機能が低下すると、脊柱が不安定となり、グローバル筋のモビライザー機能の低下が生じ、グローバル筋への過剰な負担が生じると、筋膜や骨への付着部障害が生じます。ローカル筋は脊柱に直接付着するので単関節筋とも言われ、グローバル筋は多関節筋と言われます。脊柱の理想的な運動方法はローカル筋で脊柱を安定させ、グローバル筋による大きな回転モーメントを用いて大きく早い動作を生み出すことです。単関節筋の機能不全による関節の不安定性によって関節障害が発生し、腰椎椎間板や椎間関節障害が生じ、その不安定性を抑制するために多関節筋への負荷によって筋、筋膜、筋付着部に障害が発生します。このような病態はスタビライザーである深部筋が適切に働いていないために生じたもので、これをスタビライザー機能不全症候群と早稲田大学の金岡教授が提唱されました。他にも肩関節インピンジメント症候群や上腕骨外顆炎、大腿内転筋付着部障害、腸脛靱帯炎などもスタビライザー機能不全症候群に分類されます。体幹のローカル筋は腹横筋、内腹斜筋、腰方形筋内側線維、多裂筋、グローバル筋は腹直筋、外腹斜筋、腰方形筋の外側線維などです。体幹トレーニングの方法としてお勧めしたいのが第一段階としてドローインです。腹横筋を意識して、仰向けで息を吐きながら、お腹を限界まで引っ込めた後に、さらに限界まで引っ込めると効果的です。第2段階としてハンドニーがあり、四つ這いから片脚あげ、その後、手のひらを下にして逆側腕を上げ10秒キープして左右で3セット行います。第3段階はエルボーニーで肘と膝をついて手足を上げます。肩から膝が一直線に、片方の足を軽く浮かせ次に反対側の腕を伸ばします。第4段階はバックブリッジで、仰向けで腰を浮かせ肩から膝が一直線になるよう維持して、腰を反らさず、骨盤丸め気味で背中尻をしっかり使って支えます。朝と運動前に行い、慣れるまでは毎日行うことをお勧めします。自分のできるペースで第一段階から初めてみてはいかがでしょうか?
・参考文献
金岡恒治:腰痛の病態別運動療法 体幹筋機能向上プログラム 文公堂
金岡恒治:腰部体幹丸わかりトレーニング ベースボールマガジン社