以前このコラムでも述べましたが、日本の腰痛診療ガイドラインでも運動不足は腰痛発症の危険因子である(推奨グレードC)と記載されています。高齢者でも運動量と腰痛発症の予防には有意な相関があることから、腰痛に運動は効果があると言えますが、ではどのくらいの運動をどれぐらいの強度で、どれだけの頻度で、どれぐらいの期間行うことが有効か?ということに関しては明かな科学的な根拠を示すデータが乏しいことも事実です。
一番お勧めの運動は何かと言うと、ウォーキングです。ウォーキングの強度、頻度、期間など腰痛に関してはデータがないのですが、最近注目されているのが東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利先生の研究で、群馬県中之条町の65歳以上の全住民5000人を15年以上身体活動と病気予防の関係を調査され、病気にならない歩き方を提唱され、そのメッツ健康法は厚労省の運動処方ガイドラインにも取り入れられ、成果を出している自治体もあります。
生活習慣病に関して、厚労省のHPの健康づくりのための身体活動基準2013に掲載されていますが、18-64歳までは3メッツ以上の身体活動(大股で汗ばむ程度のウォーキング)を毎日60分と3メッツ(息が弾み汗をかく程度)以上の運動を毎週60分行うことを推奨していますが、青柳先生はこれをさらに詳細に分類し、うつ病予防には1日4000歩/中強度5分以上のウォーキング、認知症、心疾患、脳卒中予防には1日5000歩/中強度7.5分以上のウォーキング、がん、動脈硬化、骨粗鬆症予防には1日7000歩/中強度15分以上のウォーキング、高血圧、糖尿病予防には1日8000歩/中強度20分以上のウォーキング、メタボリックシンドロームの予防には1日10000歩/中強度30分のウォーキング(75歳以上なら1日8000歩/中強度20分以上のウォーキングでよいと、著書の中で述べられています。
またポールウォーキング(ノルディックウォーキング)は姿勢もよくなるので勧められており、私もノルディックウォーキングは自分もやっていますが、中強度の運動として患者さんにもお勧めしています。腰痛予防に関しては骨粗鬆症予防の1日7000歩/中強度15分以上のウォーキングを目標に始めることをお勧めします。
(参考図書:やってはいけないウォーキング 青柳幸利 SB書房)