第23回 腰痛と椅子の歴史と椅子選びについて

腰痛にやさしい椅子を選ぶ方法として、ゼザイン面では腰椎の前弯を維持することに注目したランバーサポートと骨盤の前傾を促し腰椎の前弯を促すペルビックサポートがあります。

一方で椅子の開発の歴史はJenny Pynt氏の著書である「A History of seating」に詳しく記述されていますが、エジプト時代は座面に傾斜を付けてある椅子が開発されていましたが、ギリシャでは腰椎後彎(slouch)を促すようなKlismos chairが開発され、、時代とともに政治的背景、医学的論争などの影響も加わり、椅子と腰痛の関連に注目されてこなかった歴史があります。近代では18世紀になってようやく用途に基づく椅子が開発されました。椅子(座り方)と腰痛との関係については1930年代にKeeganらが腰椎前彎の重要性を指摘していましたが一方で、腰椎屈曲運動の開発者のWilliamsが座り方で腰椎後彎(slouch)を推奨しています。医学論文も20世紀にはいってからは腰椎前彎、骨盤前傾を促す姿勢が負担が少ないこと、10分以上slouchの姿勢をとると腰痛の原因になりやすいというデータも出されていますが、現時点では理想の椅子については結論が出ていません。日本での椅子の歴史は野呂影勇早稲田大学名誉教授によれば、紀元前登呂遺跡から始まり、700年代に正倉院の玉座もありますが、独特なのは禅宗の僧が座布団をしいて座禅をし(仙骨サポートに近い)、座ることに無の境地を得るという精神的概念をもたらしたことが世界の中で特異的とのことです。

通常の椅子に座る場合に手軽にできるサポートは、バスタオルを丸めて坐骨部と腰部に敷くことで体験できますので、一度試してみてください。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。