第21回 急性腰痛と鑑別を要する疾患 -帯状疱疹について-

帯状疱疹は子供の時にかかった「みずぼうそう」が治った後もヘルペスウィルスが体内の神経節に潜んでおり、加齢やストレス、過労が引き金になって免疫力が低下した時に、潜んでいたウィルスが神経をつたわって皮膚に到達して生じる皮膚疾患です。50〜70代に発症しますが、ストレスや疲労が引き金で若い方にも発症します。頭部・顔面や肋間神経や片側上肢に沿って発症することが多いのですが、実はそれぞれ17%、30%であり、腰部・腹部にも20%、臀部・片側下肢にも17%発症しますので腰痛と決して無縁ではないのです。赤い斑点があれば(医師にとっては)診断は比較的容易ですが、数日から1週間は潜伏期があり、その間は神経の走行に沿って違和感やぴりぴりする感じがあるだけですので、確定診断は難しい場合もあります。進行すると水ぶくれやただれ、かさぶたができ、治った後も後遺症として、電撃痛、キリで刺されるような痛みや夜間眠れないほどの痛みなどといった帯状疱疹後神経痛(神経障害性疼痛と言います)が残る場合があり、治療には時間を要し、難治性の場合はペインクリニックで神経ブロックなども必要になる場合もあるので、早期発見早期治療が重要です。早期であれば抗ウィルス薬のみで治癒することが多いのですが、水ぶくれになり、神経痛が残った場合には抗うつ薬であるプレガバリンなどが第一選択薬として使用されます。患部は冷やさずに温めて血行をよくします。

しかしながら皮膚疾患があれば患者さんも皮膚科に受診されますが、潜伏期には腰臀部,下肢痛で整形外科に初診で受診されるケースもあります。通常の腰痛と異なるのは腰の動きに関連性がないこと、皮膚がぴりぴりする刺激症状を有することなどありますが、早期発見のポイントは、帯状疱疹の可能性を念頭に置いて、症状のある部位の皮膚を観察し、患者さんにも注意を促し、赤い斑点がでたら皮膚科をすぐに受診するようお話ししておくことですが、座骨神経痛と診断がまぎらわしい場合もあり、私も患者さんから後で帯状疱疹でした、と教えられて、申し訳ないと思うことがありました。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。