第17回 骨粗鬆症のリスク評価FOSTAと骨粗鬆症性骨折のリスク評価FRAX

腰痛の原因の中でも比較的多い高齢者の骨粗鬆症(による脊椎骨折)についてのお話です。以前は骨粗鬆症の危険因子の一つにやせすぎや急激な体重減少(無理なダイエットなども含む)があり、やせすぎをチェックする指標として広くBMI(Body mass index)が普及しています。これは体重[kg]÷(身長[m]×身長[m])で計算され、BMI18.5未満がやせすぎで、骨粗鬆症のリスクが高いと言われていましたが、さらに今回紹介するのは、閉経後の女性に関して年齢と体重で骨粗鬆症の危険度がわかる評価法で、それがFOSTA(Female Osteoporosis Self Assessment Tool for Asia)です。(体重(kg)-年齢(歳))×0.2での結果より、マイナス4未満:危険度が高い、マイナス4~マイナス1未満:危険度が中等度、マイナス1未満:危険度が低い という判定がでますので、是非利用してみてください。ここで危険度が中等度以上であれば、骨密度の測定をお勧めします。骨密度の測定には超音波(踵で測ります)、X線写真(MD法という両手で測ります)、二重光線エネルギーX線検査装置(略してDEXAといい、前腕、脊椎、大腿骨頚部)などがありますが、やはり一番データがしっかりしているのはDEXAの脊椎,股関節の骨密度です。調べた値がYAM(young adult mean)若い時のピークの骨密度)の80%異常であれば正常、70%以上80%未満であれば骨量減少、70%未満であれば骨粗鬆症と定義され治療が推奨されますが、骨量減少の患者さんは骨粗鬆症治療は慎重に経過観察だったのですが、こちらも近年では(骨粗鬆症による)骨折の既往、両親の大腿骨頚部骨折の既往、関節リウマチ、ステロイド治療歴、現在の喫煙、一日1.5合以上のアルコール摂取などがある場合は積極的に治療を開始することが推奨されています。

一方、今後10年で(骨粗鬆症性)骨折をおこす危険性がわかる診断ツールがFRAX(fracture risk assessment tool)です。WHOが開発し、各国語に翻訳されている画期的な骨折のリスク評価法です。年齢、性別、身長,体重、骨折歴、両親の大腿骨近位部骨折歴、現在の喫煙の有無、ステロイド服用の有無、関節リウマチの有無、I型糖尿病、甲状腺機能亢進症、45歳未満の早期閉経など骨粗しょう症を招く病気の有無、ビール換算で毎日コップ3杯以上のアルコールを飲酒するかどうか、大腿骨頸部の骨密度を入力すると今後10年間で脊椎骨折と大腿骨頚部骨折の発生頻度が判明します。DEXAで骨量減少にあてはまり、FRAXが15%以上であれば骨粗鬆症治療を開始すべきであると我が国の骨粗鬆症ガイドラインでも推奨しています。骨密度を測らなくてもFRAXの計算は可能ですのでこちらはHP(http://www.shef.ac.uk/FRAX/tool.aspx?country=3)からアクセスできます。

この記事を書いた人

とよた整形外科クリニック 理事長

豊田 耕一郎

山口大学医学部、山口大学大学院卒業後山口大学医学部附属病院、国立浜田医療センター、小野田市立病院、山口大学医学部助教、講師を経て山口県立総合医療センターで脊椎手術、リハビリ部長を兼任後、2012年4月からとよた整形外科クリニックを開院。
専門性を生かした腰痛、肩こりの診断、ブロック治療、理学療法士による運動療法、手術適応の判断を迅速に行うことをモットーとし、骨粗鬆症、エコーによる診断、運動器全般の治療に取り組んでいます。