9/1山口グランドホテルで中国四国地区リウマチの治療とケア教育研修会に参加しました。聖路加病院の岡田先生の関節リウマチの原因ー現在どこまで解明されているか?を拝聴しました。骨破壊は破骨細胞、軟骨破壊は滑膜線維芽細胞が担当しています。常備型免疫と誘導型免疫としてマクロファージ、IgG抗体、好中球、IgG1などの特異抗体など様々な細胞が関与しています。ステロイドは血管内の好中球を血管外に出ないようにして炎症を抑えます。抗CCP抗体は過去の炎症による蛋白の変性のよって生じる自己抗体、リウマチ因子は変性したIgGを認識する抗体だそうです。リウマチは喫煙、肥満、歯肉病など多因子のリスクファクターが関与しています。抗体を最初にB細胞が貪食してその後樹状細胞を介してT細胞を刺激するとのことでした。抗原提示されるとオプソニン化により特異的活性化が生じて抗体発生するのでどこに薬剤が効くかを考えて薬物を使用することが重要だそうです。IL6は骨だけでなく他の組織にも効果があるので全身状態もよくするそうです。又先生は関節リウマチは治療でコントロールするのが目標であるので投薬は大切な仲間であると説明されるそうです。
関節リウマチの鑑別疾患としてSLE、末端肥大症に伴う下垂体腫瘍、ビタミンD欠乏性骨軟化症、シーハン症候群、腫瘍関連関節炎(肺腺がんが多い)などがあることを教えていただきました。病態診断、除外診断をして治療開始して治療反応から除外診断をし直して又治療するやり方も教えていただきました。
長門総合病院の谷先生の超音波でわかる運動器疾患ー診断のテクニックーを拝聴しました。関節リウマチの関節エコーは滑膜増殖などの病変をみるのに優れています。高周波のリニアプローベを選択すること、先端部分を非利き手で母指、示指、小指ではじし、ゼリーをたっぷり使用する、プローベを微妙に動かす、異方性を理解することがコツだそうです。筋肉・筋膜、肉離れの評価と修復過程も描出できます。靭帯描出のポイントは骨の付着部を描出すること、腱の描出はフイブリラーパターンに注意することを教えていただきました。症例提示で異物、猫に噛まれて化膿性腱鞘炎の鑑別、関節リウマチの関節の滑膜炎の診断、治療、治療後の治療効果にエコーが有用であることを教えていただきました。ただし関節内にドップラーで血流があればすべてリウマチではないこと、パワードップラーは関節・骨破壊を密接に関連すること、エコー所見から薬物の変更、追加する事でエコー寛解を目標とすることを強調されました。肩のエコーでは上腕二頭筋腱周囲の炎症と烏口下滑液包炎などの存在が関節リウマチを疑う所見であることを教えていただきました。
産業医大の田中教授の関節リウマチの薬物療法を拝聴しました。関節リウマチは適切な治療をしないと関節破壊が進行しますが原因とが関節滑膜炎(リンパ球が増殖する)です。自己反応性Tリンパ球を起点とした自己抗原が関節に炎症を生じるためで、リウマチはリンパ球の病気で全身疾患でもあります。関節リウマチの診断は鑑別疾患を頭に入れて分類基準を満たすことで総合的に診断します。関節病変は必ず触診することが必要です。X線所見では関節裂隙の狭小が初期病変でへバーデン結節との鑑別点は骨棘があることです。消炎鎮痛剤は補助療法であり根本療法は免疫抑制薬である抗リウマチ薬、生物学的製剤であり通常はメトトレキサート6-8mgを開始し6ヶ月以内に目標達成しなければ変更を検討します。ステロイドは初期に使用しますが長期使用は勧められていません。葉酸を使用することで副作用対策が可能ですが腎障害は禁忌のため注意が必要です。メトトレキセートで半数は寛解しますが、効果のない例は生物学的製剤(TNF阻害剤)、又はJAK阻害剤を使用し半年で効果なければ製剤学的製剤(IL6抗体など)、他のJAK阻害剤を使用して最適な薬剤を選択して寛解を目標とします。産業医大では全身CTスクリーニングにより肺癌が0.5パーセント発見されたそうです。70才以上の高齢者には肺炎球菌ワクチンを使用することで肺炎の発生が半減したそうです。骨破壊の評価はシャープスコアで軟骨と骨の評価して生物学的製剤で関節破壊の改善がえられました。生物学的製剤も半年以上ステロイドを使用せずに寛解が維持されメトトレキセート単独で半年維持できればやめることが可能でメトトレキセートを減量して中止することも可能であるとのことでした。最近トファシチニブなどのJAK阻害剤が出たことで内服治療も選択肢の一つになってきましたが全身疾患の鑑別はしっかりする必要があるそうです。
広島大学の平田先生の関節リウマチの内科的合併症とその対策を拝聴しました。関節リウマチの関節外病変である血管炎、好中球減少症、間質性肺炎について教えていただきました。関節リウマチは患者数が70-80万人で自己免疫性破壊性多発関節滑膜炎を主徴とする膠原病です。遺伝、喫煙などの環境により抗体ができて関節滑膜炎ができるAからFの段階に分類されるそうです。関節外病変として発熱、体重減少、半数に抑うつがあるそうです。リウマチ自体による皮膚潰瘍、間質性肺炎、上強膜炎など、続発症としてのアミロイドーシス、リンパ増殖性疾患、薬物の副作用、偶発的な併存症などがあります。リウマトイド血管炎はほとんど皮膚病変、末梢神経障害でありステロイド大量療法とIVCYの治療が必要で徐々に減量するとのことでした。ニューモシスチス肺炎予防にはステロイド減量、中止であり予防薬としてST合剤が第一選択だそうです。
岡山大学の西田先生の関節リウマチの外科的治療の意義ーQOL向上を目指してーを拝聴しました。免疫抑制剤や生物学的製剤により関節リウマチの薬物治療成績も半数は寛解になるぐらい向上しました。それに伴い人工関節手術も減少しています、関節リウマチ患者120万人中生物学的製剤使用は約1割であり生物学的製剤にも抵抗性もあり人工関節手術は減少していますがなくなることはないのは薬物治療の有効性の限界があるからだそうです。逆に軟骨が薄く炎症が波及しやすく、使用頻度の高い手足の関節温存手術は増えているそうです。ボタンホール変形、逆ボタンホール変形なども人工指関節を使用して美容面での改善した例も提示していただきました。生物学的製剤では関節破壊が改善してリモデリングされ手術を回避できることもあるそうです。手術適応は薬物治療でも関節炎症、破壊が残存し日常での苦痛が大きい場合でありステロイド長期使用例では感染リスクがやや高くなります。生物学的製剤は手術前は1-4週休薬して手術すれば感染リスクには有意差はなかったそうです。JAK阻害剤は休薬なしで手術されているそうです。関節破壊(特に軟骨がない荷重関節)には人工股関節・膝関節置換術は除痛機能も良好です。人工肘関節の長期成績は良好でしたが、人工肩関節、人工足関節、人工手関節手術は手技は難しく適応は慎重にということでした。
最後に関節リウマチの多職種連携のシンポジウムがありました。医師、看護師、薬剤師、理学療法士の立場からお話がありました。関節リウマチは内科的疾患と整形外科的疾患が合併しているので医師だけでなくメディカルスタッフとの連携が必要であり公的助成などの相談に介入することで生物学的製剤の導入率向上に寄与するとのことでした。看護師の立場からまび記念病院の竹本先生のお話では看護師が質の高いリウマチケアを実践指導できることを期待されています。抗リウマチ薬の知識及び生物学的製剤の指導、説明、フットケアなど多岐にわたります。次いで山口県立総合医療センターの薬剤師の田中先生のお話があり関節リウマチ患者さんの生物学的製剤自己注射の指導を二回説明するそうです。
最後に山口労災病院の理学療法士の砥上先生のお話がありました。リハビリテーションとは手術治療を行った患者さんのADL,QOL改善を目的として社会復帰を図ることです。関節リウマチの運動療法は生物学的製剤の導入によりより能動的なリハビリテーションが可能となったとのことでした。