二日目 シンポジウム「脆弱性骨折予防における医科歯科連携」を拝聴しました。松本歯科大学歯科口腔外科の松本教授の「薬剤関連顎骨壊死の現状と課題」、厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室高田先生の「保健医療政策における口腔管理の意義」、富山市民病院整形外科の重本先生の「急性期病院における医科歯科連携」、呉共済病院整形外科の寺元先生の「地域医療における医科歯科協働の実際 呉市の取り組み」について講演されました。田口教授は8020運動で歯を残す効果はあるが感染巣が残存しているため顎骨壊死は減っていないので感染巣を作らないための予防歯科が重要とお話しされました。又抜歯が必要である骨粗鬆症治療でビスフォスフオネート製剤など使用される患者さんに休薬をしないことをポジションペーパー2023に記載してあるが医科歯科連携が地域差が大きく、医師、歯科医師の情報欠如、キーマンの欠如、感染巣の除去を共通認識にすることをお話しされました。高田先生は高齢者の歯科受診は年々増加し80才で20本の歯が残っている人は52%、抜歯は65-69才が最も多いが若い人は虫歯以外に親知らずなどによる抜歯が多く、高齢者は歯周病が多いとのことでした。厚労省はかかりつけ歯科医の役割の患者アンケートからも口内環境を保つだけでなく医科との連携するから選ばれているとのことでした。オーラルフレイル対策に加えてレセプトデータを活用した評価分析事業を新規に加えたこと、医科歯科薬科連携について市民講座など国の補助が出ることを教えて頂きました。富山市民病院の重本先生は近年骨折患者の高齢者の骨粗鬆症によるものが増加していること、骨粗鬆症治療における顎骨壊死に次いで多い術後肺炎の予防に術前口腔管理が重要とのことでした。術前口腔ケアができないことも多い問題もありますが先生の施設における術前歯科受診の必要性の説明、術後翌日歯科診察、早期の骨粗鬆症治療薬の選択、多職種連携による歯科受診有無を含めた患者フォローアップなど具体的に説明されました。呉共済病院の寺元先生は呉市の医科歯科連携について市と協力してレセプトデータを利用した取り組みを講演されました。ビスフォスフオネート製剤による顎骨壊死の発生率が0.1%というデータも出され、呉市骨粗鬆症重症化予防プロジェクトが始まり歯科でのパノラマ撮影の無料健診の導入、歯科から医科への骨粗鬆症検査の相談、医科から歯科への骨粗鬆症治療前の紹介など日本で先進的な取り組みが骨折予防に効果があることも教えて頂きました。
ランチョンセミナーでは最初に東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座越智先生の「骨粗鬆症一次予防へ向けて:検査と健診の役割と障壁」拝聴しました。日本人の90%以上がビタミンD不足であるとのことですがくる病リスクが12ng/ml,大腿骨頚部骨折リスクが15ng/mlであるがカットオフ値は人種差があり今後変化する可能性があり健康寿命のための栄養という位置づけになるそうです。骨質を反映するAGEを指腹で測定する機器の紹介もあり興味深い講演でした。次いで東京慈恵医大斎藤充教授の「骨折診断・骨密度測定・骨質評価の最前線―明日から使えるAI(スマートQM)から骨質評価法の進歩まで―」では骨密度測定では椎体の変形のない椎体を計測する必要があり骨粗鬆症治療は一生続ける必要があります。椎体骨折はレントゲン写真で診断しますが見逃しがあります。Aiを利用した診断ソフトの紹介をされました。又骨AGEs(酸化ストレス)が骨質のみでなく、糖尿病、腎不全、動脈硬化、歯周病などに関与する研究を解説して頂きました。
金沢駅の出口に骨粗鬆症学会の素晴らしい垂れ幕がかかっていた写真です